都市のリズム:臺北ストリートダンスの発展

▲街中のダンサーたちが集まり、ステップやフォーメーションを完璧なものに仕上げていきます。(寫真・Brown Chen)

Ellie Chueh

編集

下山敬之

寫真

Brown Chen、Mike Wang、臺北捷運

新鮮な気持ちをもたらす春は臺北に活力を與え、街を目覚めさせます。新たな命を芽吹かせるこの季節は、人々の精神も躍動し、自己を表現する最高の機會となります。この再生と復活の精神の中で、アンダーグラウンドをルーツとするストリートダンスは、臺北におけるパワフルで普遍的な文化へと成長を遂げました。

ここではスタイリッシュなストリートダンス文化について紹介をしていきます。春は物事の始まりと成長を表します。臺北のストリートダンスも同様に、最初は一部の人たちが始めたものでしたが、多くの人たちから愛されるムーブメントとなりました。中でも2018年は大きな契機であり、ストリートダンスのメジャーなスタイルの一つである「ブレイクダンス」がユースオリンピックの正式種目と認められ、2024年の夏季オリンピックにも採用されました。選手たちがパリオリンピックに向けて練習に勵んでいる現在、ストリートダンスはもはや単なる芸術ではなく、広く認知されたスポーツとなったのです。

活気あふれる臺北の街角では、桜が満開になるようにストリートダンス文化も成長を見せており、情熱的なダンサーたちはこの都市を自らのダンスホールに変えています。ストリートダンスはただの動作に留まらず、臺北で話されている言語の一つであり、路上や広場に響き渡るリズムでもあるのです。

ストリートからステージへ

臺北ストリートダンスは日々魅力的な発展を見せています。アンダーグラウンドでひっそりと始まったストリートダンスが、今では街中に鳴り響いています。マイナーな文化ではなく、大勢が注目し稱賛を送る対象となったのです。

▲臺北ではダンサー同士がバトルをするイベントと、純粋にパフォーマンスを楽しむイベントが増えてきています。(寫真・Mike Wang)

臺北の文化を形成してきたビートやリズム、ストーリーに目を向けると、ダンス自體の成長だけでなく、臺北という街全體が変化している事に気づくでしょう。臺北の街頭は芸術を表現するための舞臺であり、その一挙手一投足がストーリーを語り、一人ひとりのダンサーが街を活気づけています。ここでは、そんなストリートダンスのルーツを探っていきます。その発祥は1970年代のニューヨークから始まりました。

「ストリートダンス」は、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、ラテン系、ジャマイカ系、カリブ系の若者たちのクリエイティブな表現方法として路上で形成されました。それは生活に対する大膽さや恐れるものはないという態度を表現するものでした。そこから時間が経つにつれ、大きく「オールドスクール」と「ニュースクール」という2つの時期に、異なる獨自のスタイルが確立されていきました。

それぞれのスタイルとテクニック

オールドスクール期のストリートダンスはエネルギッシュであり、基本のステップに忠実です。ダンサーたちは、フットワークやユニークな動作など自身のテクニックを披露するために「バトル」でクリエイティビティを競い、それぞれが獨自の表現をしていました。

ニュースクール期になるとより個性的でモダンなものへと変化し、マーシャルアーツやモダンダンス、その他のスタイルの動きを取り入れてユニークな表現をするようになりました。自由な表現こそが最良とされたのです。

オールドスクール期とニュースクール期の間には、ストリートダンスに美しさを添える數多くのスタイルが生まれました。パワームーブと呼ばれるスピン技や動きを止めるフリーズといった動作が特徴のブレイクダンス(ブレイキング)もその一つです。他にもリズミカルなステップとクールなソロが特徴のHIP-HOP、シャープで角度がはっきりとした動きで復雑さを加えたロッキングやポッピング、またストリートダンスにエレガントさをもたらすジャズダンスなどがあります。

臺北のストリートダンスの流行

ストリートダンスの成長は地理的な限界を超えて、世界的な現象となりました。もともとアメリカの主要な都市の街頭で始まったものが、今では國際的な言語として世界中のダンサーが使用しています。様々なサブカルチャーのジャンルが、豊かなグローバルネットワークとして相互に作用し、それが各地域のストリートダンスに獨自の魅力を添えているのです。

▲臺北ではストリートダンスの人気が高まり、仕事や學校終わりにレッスンに通う人が増えています。(寫真・Brown Chen)

臺北でもこの現象が根付いています。1980年代に始まった臺北のストリートダンス文化は、當時のヒップホップ・カルチャーの影響を色濃く受けています。かつてはニッチなサブカルチャーとみなされていましたが、臺北の若者たちが新しい芸術の形を探求していき、メジャーな文化へと移行していきました。特に高校で多くのストリートダンス専門のサークルが生まれ、先輩が後輩に基本的な動作を教え、ダンスを楽しむ機會を與えたことがコミュニティの発展へと繋がったのです。

▲國家両庁院など公共のスペースには學生のダンサーが多く、ユニークな振り付けを練習しています。(寫真・Brown Chen)

転機となったのは2007年に臺北で開催された『Red Bull BC One』という大會。これは単なる競技に留まらず、臺灣全土からB-boy、B-Girlが集まり、ストリートダンスのグローバルな精神と臺北獨自の雰囲気が融合しました。

▲國家両庁院など公共のスペースには學生のダンサーが多く、ユニークな振り付けを練習しています。(寫真・Brown Chen)

さらに最近の出來事で言えば、臺北市立大學に運働芸術學系(パフォーミングアーツ學科)が設立されたことが挙げられます。2007年に認可されたこの學科は、當初は「働態芸術學系」という名稱でしたが、その不斷の成長を受けて2013年に現在の名稱へと改名されました。これは臺北市がスポーツだけではなく、ストリートダンスを含めた舞臺芸術も支援し、加えてストリートダンスの文化的な重要性や臺北アートシーンへの貢獻度合いを認識していることを示しています。それにより、かつてはサブカルチャーであったストリートダンスが、現在では幅広く普及しているのです。

臺北がストリートダンスを受け入れるに従い、地元のイベントや大會に參加するグループやコミュニティも増えてきています。こうした変化は老若男女を問わず受け入れられています。體力向上や協調性が磨かれるといったストリートダンスを學ぶメリットが広く知られるにつれ、子供にストリートダンスを學ばせようとレッスンに參加させる親もいるほどです。ダンススクールでは、子どもたちにステップだけでなく、自信やクリエイティビティ、芸術鑑賞やチームワークといった重要な価値観も教えています。こうした変化により、ストリートダンスは単なる娯楽ではなく、誰もが楽しめる魅力的な芸術へと変貌を遂げました。現在、臺北の街頭は子供も大人も自身のテクニックを披露する舞臺となっており、臺北に活気を添えています。

簡単に言えば、臺北のストリートダンスは長い道のりを歩んできたということです。その中で単なる芸術表現の一つではなく、今では臺北のアイデンティティを形成し、多様な文化を集約した存在となりました。

都市をダンススタジオに

街の至るところでダンスを練習し、そのテクニックを披露するストリートダンス本來の精神は、活気あふれる臺北の街に色濃く殘っています。中でも花博公園、國家両庁院、臺北表演芸術中心などは広いスペースがあるので、多くのストリートダンサーが集まります。國父紀念館も歴史的な意義のある場所ですが、現在ではストリートダンスの現代的なリズムが加わり、新舊、東西という要素のユニークな融合を生み出しています。

▲広々とした臺北花博公園はダンサーたちの練習に十分なスペースがあります。(寫真・Brown Chen)

これらの場所は広々としたスペースをストリートダンサーに提供し、彼らのクリエイティビティを表現する手助けをしているほか、ダンサー同士のつながりを生み、アイデアの交換や友情を育む場、さらには臺北のストリートダンスコミュニティを発展させる場としても機能しています。

MRT駅 — 若い才能の発祥地

臺北の交通を擔うMRTですが、西門駅や雙連駅などはストリートダンスの中心地となっています。これらの駅はアクセスが良いことから、學生たちが集まる人気のスポットとなっています。

また、中山駅や前述した雙連駅など一部の駅では、特別に設計された鏡張りのスペースがありダンスの練習が可能です。ストリートダンスのリズムと街の音が混ざり合うMRTの駅は、初心者から上級者まで多くのダンサーが集まる憩いの場なのです。

▲MRTカップ・ストリートダンス大會ではダンサーたちが卓越したパフォーマンスを見せます。(寫真・臺北捷運)

MRTの駅はストリートダンスの中心地として普及する中で、今では有名となった「MRTカップ・ストリートダンス大會」も開催されるようになりました。この大會は臺北捷運(Metro Taipei)が2005年から始めたイベントで、毎年8月中旬から9月にかけて開催されます。臺北のストリートダンサーには見逃せないイベントであり、臺北の多様な文化に新たな息吹をもたらしてくれます。こうした大會は楽しさを感染させる力があり、ストリートダンスの情熱と興味がどのように臺北の街角に広がっているかを示しています。

臺北の中心部ではエネルギーに満ちた音楽があふれ、街のエネルギーと豊かな文化遺產が混じり合う獨特な雰囲気を作り出し、多様性と包容力のあるストリートでは、ダンサーたちが奏でるステップが魅力的なリズムで街に彩りを添えています。このようにして臺北は獨自のリズムを奏で、その精神を稱賛しています。